松下記念病院
(エイジフリー・ライフ大和田提携医)
精神・神経科部長 村田先生
認知症と鑑別を要する状態
 現在わが国では急速に高齢化が進んでいます。これまでの研究の結果やわたしたちの身の回りの体験から、加齢に伴い認知症の出現率が上昇することが知られています。そのため、高齢者が日常生活の中で異常な言動を示したり、これまではできていたことができなくなったりすると、認知症の発症を先ず疑いますが、認知症のように見えて実は認知症とは異なる病態が存在します。
 これらの中には薬物治療で軽快するものもあり、鑑別することが予後を考えるうえでも、治療するうえでも重要です。代表的な状態として以下の二つがあげられます。
 高齢者では近親者や友人との死別、病気による身体機能の低下などの喪失体験を契機として抑うつ状態に移行することがしばしば見られます。抑うつ状態では意欲低下や思考力の低下がみられるため、認知症のようにうつることがあります。しかし、うつ病では悲壮感やさびしさ、もの悲しさを訴えることが多いのに比べ、認知症(特にアルツハイマー型認知症)では多幸的となったりすることが多いのが特徴です。また、うつ病では食欲低下をしめしたり、中途覚醒または早期覚醒型の不眠をしめしたりすることが多いのですが、認知症では原則としてこのような食欲睡眠障害は見られません。そして、抑うつ状態には抗うつ薬が奏効しやすく、認知症に比べると治療に対する反応性がいいのも特徴です。ただし、認知症に合併した抑うつ状態というものもありますので「認知症か抑うつ状態か」という考えは持たないほうがいいでしょう。
 せん妄状態は意識障害の一つであり、多くは幻視と様々な程度の興奮を伴います。夜間に起こることが多く、夜間せん妄といいます。せん妄状態では意識障害があるのですから、会話などの理解が不良で意思の疎通が悪く、またこの間の出来事は覚えていないのが普通です。このような点は認知症に類似しますが、せん妄状態は持続が認知症に比べ短く、1日の中でも変動するのが特徴です。つまり「しっかりしている時期」と「そうでない時期」が存在します。また、せん妄状態には、糖尿病などの代謝疾患や内分泌の異常が原因となっている事があります。通常の診察だけでは判断がつかない場合でも、脳波検査は有効な検査法です。原因疾患への対処、幻視や興奮への薬物治療、昼夜リズムの確率などがせん妄状態の治療として行われます。やはりせん妄状態も抑うつ状態と同じく、認知症に合併することがあります。せん妄状態でないときに検査を行い、認知症かどうか、またその重症度を判定することが必要です。
 認知症が疑われる高齢者が医療機関を受診する意義は、このような認知症以外の状態を除外して正しく認知症の判定を下すところにもあります。
ナイス・ケア大和田「医師からの一言」
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