Vol.12


宮武 剛      目白大学大学院人間学部教授

高齢期に集中して医療費が必要になる

日本は国民皆保険です。生まれてから亡くなるまで、必ずどこかの公的な医療保険制度に入るという極めて安心できるシステムを守ってきました。
しかし、高齢化と医療の高度化により、医療費は膨張し続けています。
高齢化でお年寄りが増えれば、病気がちになる。医療の高度化による新薬や新しい治療方法は、高くつきます。
特に、日本人がひとりあたり生涯に使う医療費は (たくさん使う人も、少ない人もいますが)、ざっと2300万円くらいで、そのうち半分を70歳以上の人が使っています。
高齢期に集中する医療費をどうやって調達するかが、国民皆保険を守る上で最大の課題になるわけです。

老人保険制度は保険ではなく共同事業

医療保険制度には、市区町村の国民健康保険、大企業の従業員で作る健康保険組合、中小企業の従業員の人たちの政府管掌健康保険、公務員を中心とする共済組合などがあります。なかでも、退職して年金生活を送る高齢者のほとんどは、住んでいる市区町村の国民健康保険に加入しています。
みやたけ・たけし●1968年、早大政経学部卒、毎日新聞入社、科学部長、論説委員、論説副委員長等。99年、埼玉県立大学教授、07年、目白大学・大学院教授兼人間学部教授(社会保障論・社会福祉原論)。厚労省・社会保障審議会委員(年金部会)、医療情報提供の在り方検討会・座長代理、財務省・財政制度等審議会共済分科会長、社会保険庁・運営評議会・座長を務める。著書に『介護保険の再出発・医療を変える、福祉も変わる』(保健同人社)『年金のすべて』(毎日新聞社)、『Social Security in Japan』(フォーリンプレスセンター)等、共著『大学病院ってなんだ』(新潮文庫)『社会保障論』(全社協)等。
そのため、市区町村の国民健康保険は医療費がふくらんでしまう。
そこで、75歳以上の加入率が低い健保組合などは、お金(「拠出金」)を出しあい、75歳以上の加入率が圧倒的に高い市区町村の国民健康保険に仕送りしています。このしくみが、老人保健制度です。
よく、老人保健制度は医療保険だと誤解されますが、75歳以上の医療費をまかなうための共同事業で、保険ではないのです。

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後期高齢者医療制度は
独立した医療制度


ところで、「拠出金」を出している健康保険組合などは、75歳以上の医療費を使われた分だけ請求されます。
75歳以上は医療費をたくさん使うので、平均年齢が若い加入者が多い健康保険組合ほど、たくさん「拠出金」を出さなければならない。田舎に住んでいるおじいちゃん、おばあちゃんに仕送りするようなものです。

しかし、老人保健制度は支払などの実務は市区町村がやりますが、運営に責任を持つ保険者がいないため、医療費を効率的に使う責任の所在、あるいは薬漬けや検査漬けのムダ使いを点検する機能が欠けていました。
これらを背景に、責任の所在をはっきりさせる新しいしくみを作らなければいけないと10数年間、議論が続けられてきました。
その結果、75歳以上の人たちの独立した医療制度を創ろうということになったのが、来春からスタートする後期高齢者医療制度です。

1335万人の後期高齢者の大移動

法律では「高齢者医療制度」といいますが、一般的には、わかりやすいので、後期高齢者医療制度という名称が使われています。
これまで、75歳以上の圧倒的多数は市区町村の国民健康保険という家に現役
世代とともに同居していました。しかし、来春以降、75歳の誕生日を迎えた人は、所得などに関係なく全員、後期高齢者医療制度という新しい家に引っ越すのです
それは、1335万人にのぼる75歳以上の人たちの引越しで、高齢者の大移動になります。

運営に責任を持つのは
都道府県単位の広域連合


そして、後期高齢者医療制度の運営責任を持つのは広域連合です。都道府県ごとに設置され、すべての市区町村が参加することになります。
東京都でいえば、23区と市部がすべて参加する単一の広域連合を作ります。
広域連合は特別地方公共団体ですから、市区町村の首長が互選で広域連合長を選び、議会もありますから広域連合議員を選びます。
ただし、広域連合は全体の運営はやりますが、保険料を集めたり、相談にのるなどの実務を担当するのは市区町村です。今までの伝統的な健康保険の保険者と異なり、後期高齢者医療制度では運営と実務が分かれてしまうわけです。

75歳以上の医療費は約12兆円

75歳以上の後期高齢者に必要な医療費は、12兆円くらいと考えられています。医療機関の窓口で利用者が払う自己負担分を除くと約11兆円になり、このお金をどうやって集めるのか。
1割は75歳以上が払う保険料でまかなう。残りの9割のうち5割は税金で、4割は各保険制度―――健康保険組合や政府管掌保険、共済組合、国民健康保険―――が、人数割で払う。これを「支援金」といいます。
老人保健制度の「拠出金]は各保険制度にまぎれこんでいましたが、今度は現役の人たちが拠出する「支援金」とはっきりすることになりました。サラリーマンだと、給与明細の健康保険料の欄に、自分たちが使う保険料と75歳以上のための「支援金」分が区別して記載されることになります。
しかし、75歳以上が自分たちでまかなうのは1割にしかならない。このため、高齢者医療「保険」制度とはいえなくて、高齢者医療制度と名づけたのです。

年金から天引きされる
月額保険料は約6200円


後期高齢者医療制度では、住んでいる都道府県ごとに保険料が決められます。
これまで、市区町村ごとにずいぶん保険料の金額が違っていたのが、同一県内すべて同じ保険料になります。

このため、市区町村によって、保険料が低かった人は高くなったり、高かった人は低くなったり、かなり激変が起きることが予想されますが、今、都道府県単位の広域連合で保険料を決めるための協議をしているところなので、どのくらいの影響になるのかは、まだ読めません。
ただし、厚生労働省が基本となる保険料を提示しています。
 

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年金生活者には、モデル年金といわれる例があります。月の年金収入が23万円―――夫がサラリーマンで、妻が専業主婦だった場合、基礎年金6万6000円がふたり分で13万2000円、夫の厚生年金の報酬比例部分が約10万円なので、あわせて23万円くらいになります。
夫に約17万円の年金収入がある場合、後期高齢者医療制度の保険料は、応益負担(加入者の基本料金) が月額3100円、プラス応能負担(支払能力に応じて払う部分) が同じく3100円で、あわせて6200円になります。
妻は6万6000円の基礎年金しかありませんから、基本料金の3100円だけ払う。夫婦あわせて月額1万円弱くらいで、それほど激しく変化しない設定になっています。
自営業の人は、国民年金6万6000円のみの場合は3100円で、年金額が少をい人は最大7割の減額になります。

保険料の支払いは個人単位

大きく変わるのは、これまで、国民健康保険料は世帯主が払っていたのですが今度は夫も妻もそれぞれの年金から個人単位で払う点と、年金から天引きされることになるという、ふたつです。
それから、今まで息子や娘の医療保険の被扶養者として、保険料を払わなくて済んできた人たちが約200万人いるのですが、この人たちは新たに保険料を負担することになります。
ただし、来年の春から半年間、保険料の負担を「凍結」することが与党合意されています。しかし、医療保険のサービスそのものは来年4月から変わります。医療機関には、後期高齢者医療制度の新しい保険証を持っていくことになります。

後期高齢者医療制度の課題

社会保険というのは本来、若い人も高齢者も年齢に関係なく、そして収入の低い人も高い人も、さまざまな人びとがみんなで保険料を払って、プールしたお金を使うことができる連帯のしくみです。
75歳以上の高齢者だけを対象にする医療制度は、先進国のなかではどこにもないのですが、もはや後戻りできないところに来ています。
また、これまでは75歳以上も同じ診療報酬体系でしたが、後期高齢者医療制度は独立した制度なので、独自の診療報酬を設定できます。今、どこまで独自のものにするかが話しあわれているところです。
初診料は一定程度の高い評価になりますが、75歳以上は慢性的な病気が多いから、再診料は下げよう。そして、生活面も含めて把握している主治医をつくり、主治医には一定程度の診療報酬をつけようという方向です。
それは、病院に駆け込む前に、かかりつけのお医者さんに相談してくださいということです。また、ちょっといやな表現ですが、いずれ75歳以上の人たちは後期高齢者医療制度のなかで死を迎えることになります。緩和ケアやホスピスなどの終末期医療についても検討されているところです。
[まとめ:小竹雅子]  





ご入居者からの声
カルデアの家と「しあわせ考」 才木正雄さま

この間、所用があって辞書を調べていた時に、ついでにふと「しあわせ」にページを開いてみました。すると「しあわせ」とは「幸せ」と書いても間違いではないが、本当は「仕合わせ」と書くのが正しいのだそうな。

「仕え合う」―――なるほど、自分一人の満足のためではなく、周りの人と仕え合って満足を分かち合う「仕合わせ」のほうが本物のしあわせだとするならば、カルデアの家は正に「幸せ」そのものではないかと思えてきました。職員も入居者も互いに尊重し合う暮らしが、そこには自然に培われているから。
ほかの良さもさることながら、こんなすばらしい「仕合わせ」が自然に備わっているカルデアの家を終の棲家に選んでよかったと思うと同時に、そのカルデア家族の一員に加えていただいていることに感謝して、これからも「仕え合う」本物のしあわせを、いっそう大事にしてゆきたいと思います。

ご家族からの声
変わらぬ温かさに感謝 原田由紀枝さま

父と母のためにカルデアの家を選んだのは私でした。父は3年前、ここでの生活に満足した後、穏やかに父らしい最期の日を迎えました。職員の皆さんの自然な、それでいて深い心配りと支えがあってのことだったと感謝しています。
一人になった母が父の死を静かに受容し、ここでの生活をさらに充実して過ごせるのも、入居した当初から変わらぬ周囲の温かさ故です。私が選んだところというより、カルデアの家のほうが父と母を招いてくれたのでしょう。

ケア職員からの声
介護に答えはない 内野晴章

私がカルデアの家に来て、早いもので既に1年4ヶ月が過ぎました。後輩も数多くできて、いつの間にか教えられる立場から教える立場になりました。

しかし、介護に「これだ」という明確な答えはなく、日々の仕事の中でも学ぶことが多くあります。答えがないからこそ、介護の仕事にやりがいを感じ、楽しいと感じるのです。